【パドック回顧】
1・サトノラーゼン
少しチャカ付いてはいたが、イレ込んでいるといったほどではない。まだ成長段階で少し腰が浮いた馬体ではあるが踏み込みの力強さから言えば通用する。
2・タンタアレグリア
ややドッシリとした体の造りで踏み込みは力強いというよりは少し重い。そのためか、からだもまだもうひと絞りできそうだ。捌き自体は硬さはないので東京の馬場は合う。少し気合乗りが不足している印象を受ける。
3・コメート
やや首の高い歩き方ではあるが比較的力強い踏み込みが目立っている。馬体は少しアンバランスで胸前から腰に掛けてギュッと詰まった体形であるが、今後の成長次第では距離に融通が利く体形になりそう。
4・グァンチャーレ
胸の厚みの割には腰の筋肉量が不足しているアンバランスな体形で、現状は前捌きに頼った歩き方。この日本ダービーというレースでは後肢を含めた全身を使った歩き方でないと勝負にならない。
5・ダノンメジャー
ゴロンとした馬体で体形からは明らかにマイルの方が良い。踏み込みの力強さはあるが、後肢の堅さが目立っており、長所を打ち消している点は割引。
6・ポルトドートウィユ
左後肢の踏み込みが少し堅さが残る現状ではあるが、非常にバランスの良い馬体をしている。今後の成長次第では化ける可能性も秘める体付きで、前捌きの素軽さもこのまま成長して欲しい逸材。
7・レーヴミストラル
一目でわかる馬体の部分部分に筋肉量が足りていない馬。全てにおいて同世代の3歳馬と比べると、まだまだ成長段階である。個人的なイメージでは一般の馬で言う2歳の10月くらいの体付き。さすがにこの状態で日本ダービーは勝負にならない。
8・ベルラップ
捌きが意外なほどスムーズで馬体のバランスも良い。後肢の送り出しの弱さが目立っているが、前捌きはスムーズで気合乗りも抜群。全体的に言えばかなりデキの良さが伺える、
9・コスモナインボール
胴が縦に長い体の造りで距離面に限界がある体付き。踏み込みの力強さも全く目立っていない現状からも平凡に見える。
10・ミュゼエイリアン
少しイレ込み気味。踏み込みの力強さはあまり目立っていない。調教の内容が良かっただけに期待したが、この状態では勝負にならない。
11サトノクラウン
前捌きはしなやかで踏み込みの力強さは好感が持てる。特に前走時より力強さが目立っており、普通の年ならこれで十分に勝ち負けになるのだが。
12・アダムスブリッジ
久々と言うこともあり後肢の硬さが目に付く歩様で、現状は前脚の力強さに頼った歩様をしている。体の仕上がりは良いが、まだ腰に筋肉が付いていない状態で、バランスが少し悪い。これからの馬。
13・リアルスティール
状態自体はかなり良さそうに見える。前走時と比べて後肢の踏み込み時の堅さもなくなり、全体を通してスムーズになった。前走時より大きな上積みがあるのは間違いないが、なにぶんすぐ後ろにいるドゥラメンテが凄すぎて比べるのは可哀想だ。
14・ドゥラメンテ
身のこなしの柔らかさも素晴らしく踏み込みがとにかく深く力強い。完歩の収縮性もありえないほどの伸びで、もう他の馬と比べるのは可哀想なほど馬体の威圧感がまるで違う。前肢の稼動域がこれだけ広いと、まず怪我はしない。前脚を上げる仕草も時々しているが、馬自身がこれからレースであるのを理解してか、自身で準備運動をしているのではないかとすら思える。馬体のバランスが素晴らしく、それでいながら成長の余地を十分に残している。これだけ背中の柔らかい馬は本当に見たことがない。トウカイテイオーやディープインパクトを超える可能性が高い。末恐ろしい馬だ。
15・ミュゼスルタン
少し歩幅の小さな歩きをしており、距離面で少し限界がありそうな歩き方である。馬体のバランスは使われつつ良化をしているためよくなっている。踏み込みは力強く、例年の日本ダービーなら通用してもおかしくない。
16・スピリッツミノル
ドゥラメンテの後ろを歩かされているためか、かわいそうなほど前捌きの堅さが浮き彫りになっている。馬体はまだまだ太い。
17・キタサンブラック
体形から言えば2400mは十分に勝負になる体付きで、踏み込みの力強さも目立っている。特に後肢の踏み込みがかなり力強い。ただ、唯一の難点を言えば、成長途上のためか少し腰高で皐月賞時よりバランスが悪くなっている。
18・タガノエスプレッソ
歩幅は広く歩けているものの、踏み込みの力強さが足りない。また、この馬も成長途上のためか、前肢が伸びて腰が低くなりすぎてしまいバランスが悪くなっている。
【返し馬回顧】
14・ドゥラメンテ
後姿の返し馬であったが、左後肢が異常なほど『く』の字に曲がっていた。少し不安を感じた部分ではあったが、おそらくこの馬の柔らかさの賜物であろう。これだけ柔らかい走りをする馬が同世代に負けることは考えられないデキ。
17・キタサンブラック
走りを見る限りは非常にトビが綺麗である。こういったパンパンの馬場でこその走法。
【レース回顧】
非常に素晴らしいダービーで、二冠達成の瞬間を会員様と一緒に観戦できたことが何よりも私自身の宝となった。そんな素晴らしいダービーであった。ほとんど中弛みのない厳しいレースとなった今年のダービーであるが、中身の厳しいペースになったからこそ、勝った馬の強さがより讃えられるものであると思う。
ハロンタイム
12.7 - 10.9 - 11.8 - 11.7 - 11.7
- 12.5 - 12.5 - 12.4 - 12.4 - 11.9 - 11.0 - 11.7
勝ったドゥラメンテは本当に強い勝ち方で二冠達成となった。勝負のポイントは1コーナーの入りだったと思える。好スタートを決めたドゥラメンテは、楽に先手を取ることができた。ちょうど外目の枠だったので外から被せる馬がいなかったのは幸いだったと言える。1コーナーに入る時に、ドゥラメンテの外には馬がおらず、後方には2馬身ほど間が開いていた。内にサトノラーゼンはいたものの、何馬身もの間が開いているので、実質は周りに誰もいない状況を1コーナーで作ることができた。この全くフリーの状況を作ることができたので、鞍上も楽な競馬になったといって良いだろう。昔から『ダービーは運の強い馬が勝つ』と言われているが、強い馬がプレッシャーも掛けられずにフリーになること自体が稀な事であるが、これが今年最も運が向いた場面だったと思う。
そのおかげもあり向こう正面ではドゥラメンテも楽なペースで自身の走りたいように走ることができた。折り合いに苦しむこともなく、淡々と追走できたことで末脚を溜めることができたと見る。勝負所でレーヴドミストラルが早く仕掛けてドゥラメンテを被せに行こうとするが、ほとんど同時くらいにドゥラメンテも早く仕掛けている。そのため外から被せられることなく直線へ向いた時は進路は確保できた。直線へ向いては早仕掛けだったのに、内のサトノラーゼンと併せる形になったのは、ホンの少しだけで、地力に違いを見せて徐々に突き放して行った。上がり33.9秒の上がりで駆け抜けたが、早仕掛けをしてのタイムということを考えれば価値は大きい。非常に強い勝ち方であった。
今後はどういった進路を取るかはわからないが、非常に夢が広がる強い勝ち方であった。おそらく菊花賞に出ても勝てるだろうが、今の時代は三冠に拘る時代ではなくなっている。能力を120%発揮できる舞台と言う意味では凱旋門賞が一番のように思える。日本悲願の凱旋門賞制覇はこの馬で達成してほしいものだ。
2着のサトノラーゼンは、最内枠だったこともあるが、好スタートを決めて道中は内々をピッタリ回る競馬で、1コーナーまで上手く脚を温存できた。1コーナーを回って向こう正面では前から8番手くらいの先団の位置取りとなったが、徹底的に距離ロスを防ぐ競馬で脚を温存。折り合いもピッタリ付いて追走でき、勝負所ではちょうどドゥラメンテと並ぶ形で併走し、鋭く反応していた。内々で距離ロスを徹底的に防いだことで、直線へ向いては余力があってかドゥラメンテと叩き合った。しかし、残り400m地点から徐々に引き離され気味になり、最後は1馬身3/4だけ差を付けられた。全く惜しくも何ともない2着ではあったが、ドゥラメンテのペースに併せて2着を死守したことに価値がある。通常、強い馬と併せる競馬をすると余計に体力を消耗してしまい、着外に落ちてしまうことが多い。それだけに、抜かれた後もしぶとく2着を死守したのは能力の表れと言える。今後が非常に楽しみとなった。
3着のサトノクラウンは、皐月賞とは違って今回はまずまずのスタートを決めることができた。リアルスティールを前に見ながら後方4・5番手から末脚を溜める競馬。終始馬場の内側を走っていたこともあり上手く距離ロスを抑えながら走っていた。勝負所でペースが上がった時に外へ持ち出して、直線は大外を選択した。コーナリングで外へ出している間にドゥラメンテとは大きな差を広げられたが、残り200m地点からは急追して差を詰めてきた。最後は届かなかったものの、出走馬中でもっとも早い上がりタイムをマークした。この馬には器用さに欠ける面があるので、今後は秋に向けて器用さを身につけたいところだ。
4着のリアルスティールは好スタートを決めたが、ある程度予想したようにドゥラメンテの後方から直線に賭ける競馬をした。1コーナーに入る前に少し掛かり気味の追走となったが、すぐに折り合うことができた。ちょうどドゥラメンテを見る形で2馬身ほど後ろからの追走となったが、これが逆にドゥラメンテへのプレッシャーをかけることができなかったのが災いとなったともいえる。勝負所でペースが上がると反応良く追い上げたが、直線ではドゥラメンテが仕掛けてからは瞬時に引き離された時点でほぼ勝負あったといえる。レース中に骨折していたように確かに力を発揮できなかった部分はあったかもしれない。幸い怪我は3ヶ月もあれば完治する剥離骨折ということなので、秋の活躍に期待したい。
5着のコメートは積極的な競馬で、先行策で3番手から追走する競馬。道中は先行馬には厳しい流れとなったが、折り合いを欠くことなくピッタリと付いていた。勝負所でペースが上がったも流れに乗りながら直線へ向いた。直線へ向いてからは馬自身は外へヨレそうな雰囲気はあったものの、嘉藤騎手は真っ直ぐ走らせて5着に粘った。鞍上の嘉藤騎手は33歳の中堅ではあるが、通算120勝しかしていない騎手である。しかし、勝利数だけではわからないところがジョッキーの腕。この騎手は今まで乗り馬には恵まれなかったが、今回の好走を期に是非良い馬にも乗ってほしいものだ。馬に恵まれてリーディング上位に顔を出している騎手よりよっぽど、嘉藤騎手の方が腕達者である。それを確認できるのが直線残り300mの地点で馬が外へ行こうとしているのを矯正しながら乗っている点。こういう乗り方は下手な騎手なら絶対できない。今後は人馬共に大躍進を期待したい。
6着のミュゼスルタンは距離不安もあったことから直線に賭ける競馬をした。道中はずっと死んだふりをして直線でどれだけ詰められるかに賭けた。道中は折り合いを欠くこともなく追走していたことで、直線ではかなり見所のある末脚を繰り出していた。直線は届かなかったが、距離にある程度はメドの立った内容であり、今後は2000mくらいまでなら大丈夫だろう。
9着のレーヴミストラルはドゥラメンテのすぐ後ろから追走する競馬で、直線でどこまで通用するかに賭けたようだ。ただ、勝負所でドゥラメンテが仕掛けると、一瞬で絶望的な差を付けられてしまった。瞬発力不足なのは今の段階で腰に十分な筋肉が付いていないからで、現状での完成度の差だろう。今の成長度では力を出し切っていると思える。
14着のキタサンブラックは、好スタートを決めて2番手からの競馬。上手く流れには乗れていたが、前半の流れが速かったこともあり上手く脚を溜めれなかった。直線へ向いて手応えは良さそうには見えたが、前半1コーナーまでに少し掛かったことも影響してか、残り400mの地点でバッタリと止まってしまった。個人的には大丈夫と思ったが結果的に2400mは長かったと言うことだろう。秋に適正距離へ出走した際は注意したい。特にこの世代はかなりレベルが高い印象があるので、人気が落ちるようなら面白い。
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